Submitted by Laure Haak on Tue, 11/18/2014 - 13:39

(English version)

ORCID は 2 回のアウトリーチ・ミーティングを開催しています。そこでは技術開発のアップデート、会員のインテグレーションの動向、研究者の利用状況などの報告がおこなわれました。また、これらの会は、研究コミュニティの関係者と顔を合わせてご意見を伺う機会です。

アウトリーチ・ミーティングの出席者と同時通訳者ブースこの 10月に、私たちは東京で第 13 回目のアウトリーチ・ミーティング (#orcid13) を開催しました。これは国立情報学研究所 (NII) にホストしていただき、日本、台湾、香港、韓国からの講演者がありました。内容がよく理解できるよう、日英同時通訳も用意しました。会議のプログラムと演者のスライドは ORCID の Event ページで見られます。ORCID の最新動向と 2015 年の技術開発計画も含まれています。

NII の安達淳副所長が開会の挨拶をおこない、合わせて日本の研究インフラストラクチャーの概要を解説しました。日本では学術振興会が付与している科研費番号 (KAKEN-ID) という研究者番号が、科研費を取得する際に必要です。NII はクラウド型機関リポジトリ JAIRO、NACSIS 目録、人名典拠ファイルなどを運営しています。NII の CiNii は学協会発行雑誌の索引です。これらのサービスにおいて、人名のあいまいさは問題となります。NII の武田英明教授 (ORCID 理事) は、日本国内および国外の機関において同定番号とメタデータの共有が重要であることを説明しました。「研究者はさまざまな同定番号を使っています。NII はこれらの同定番号を研究者がうまくく管理できるようにしたいと考えています。」と武田教授は述べました。NII は、国内外における研究者情報のリンクを目指す研究者リゾルバー (RNS) を開発し、そこに ORCID も入れています。武田教授によれば、研究が個人的な手作業のものから相互に結合したデジタル型のものへ変貌し、さらにデータそのものが成果物や研究材料となる時代においては、名称同定は核となる要素です。

出版者の努力で、こうした相互結合が進展しつつあります。韓国医学編集者協会 (KAMJE) のリー・チョンシル,氏は、韓国人の 50% が 3 つの姓のどれかに属しており、著者が同姓同名である論文は珍しくない、と述べ、研究者を区別することの重要性を強調しました。こういう状況では論文を氏名で検索するのは適当ではありません。KAMJE にとって固有のデジタル同定番号は絶対に必要です。ORCID は氏名のあいまいさを解決し、韓国の研究を国際化するために役立ちます。CrossRef の事務局長であるエド・ペンツ氏は、研究業績を、個々の著者とその寄与を含めて明確に結びつけることの必要性について強調しました。ORCID が実現したデジタル同定番号による結合を使うと、データベースを横断した研究者の発見、レコード管理、査読者の選択などが可能になります。そのためには、この同定番号の普及に研究者が関与することと、研究機関における活用が重要です。CrossRef はデジタル文献の同定をおこなっていますが、認証された ORCID ID に対し、対応する雑誌論文情報を転送するサービスを計画していると述べました。ベンツ氏は、ORCID が広く認知されるために時間がかかったとしても、必須のものになることは間違いないと確信しています。

次のパネル・セッションでは、研究と研究者の可視化のために同定番号が役に立つことについて議論がなされました。韓国科学技術院 (KISTI) のサニー・チョイ,氏は、韓国の研究評価管理、出版における ORCID の使用、について報告しました。Tweet from Kosuke Tanabe at ORCID Outreach meeting: "The development of Ninja is available today" with the URL.科学技術振興機構 (JST) の水野充氏は、事実に基づいた研究開発方針の必要性について述べ、そのための JST の知識インフラストラクチャーを紹介しました。そこでは、研究助成、論文出版、データセット、研究者の情報が相互にリンクされています。彼は ORCID がこのインフラストラクチャー、とりわけ、日本の研究者の台帳である ResearchMap にとっての鍵であると考えています。NII と協力し、JST は ResearchMap と ORCID の間のリンクとデータ交換を実現しました。物質材料研究所 (NIMS) の谷藤幹子氏は、ORCID de Ninja という、プロフィール・サービスについて報告しました。これは、同研究所に勤務する若い研究者の可視化、業績との結合、移動に際しての便宜を推進するためのものです。これまでに、NIMS の研究者とプレプリントや論文は、NIMS の所属 ID でリンクしていました。しかし 20% を超える研究者が日本国籍ではなく、彼らを含めて研究者の移動は極めて頻繁です。NIMS は ORCID を国際的な研究者 ID とすることとし、これを NIMS の所属 ID と結合することにしました。ORCID ID は研究者が移動しても有効で、NIMS で登録したプロフィール情報は次の職場でも有効です。

Sidebar entitled "Why did JpGU implement ORCID?"次の議論は大学や学協会における ORCID の適用事例です。香港浸會大学のクリス・チャン氏と国立台湾大学のケー・ハオレン氏は、彼らの大学に ORCID を導入した経験について報告しました。どちらの場合も、研究実績を目に見えるようにし、研究文化を改善する必要性からおこなったものです。大学研究者の正確な研究情報は極めて重要なので、そのための国際的な人名明確化のツールとしての ORCID の可能性に目をつけたのです。さらに ORCID 導入によって、大学および国の研究成果報告システムにおける研究情報の更新が大変簡単になりました。日本地球惑星科学連合 (JpGU)の近藤康久氏も、同様の研究レコード管理の目的で ORCID を導入しました。ただし、主な目的は JpGU の会員相互の科学研究上の交流です。近藤氏によれば、「ORCID は異なるウェブサイトにある研究情報をリンクします。これは ORCID の重要な可能性です。」

これらの報告に共通するポイントは、ORCID の特徴を最大限に生かすために、研究者を巻き込むことが必要である点です。この会議の直前にアンバサダーの時実象一氏の援助により日本語版の ORCID サイトを公開しました。しかし、ORCID を普及させるには、日本および各国で、研究システムに ORCID を導入し実際に研究者と接触している研究機関の協力が必要です。アウトリーチ・ミーティングのような機会は、これら各機関が顔を合わせて経験を交換し、今後の計画を議論し、協力関係を築くために役立ちます。

 

ORCID の各種催しについては Events ページをご覧ください。次のアウトリーチ・ミーティングは 2015 年 5 月 18-20 にバルセロナで開かれます。

 

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